決算時期に奥様の役員報酬を下げることで、ご主人の扶養になることはできるでしょうか?
そもそもこの「扶養」を考えるときに注意しないといけないのが、税法上の「扶養(配偶者)控除」の扶養と社会保険で言う「被扶養者」の扶養とでは根本的に違うということです。
税法上の配偶者控除については、年収103万以下が対象です。こちらは、役員であっても従業員であっても関係なく、年収103万円以下であれば配偶者控除を受けられます。この額は、給与所得控除の65万円+配偶者控除額38万円=103万円からきています。
次に社会保険では、年収130万未満かつ主人の収入の半分未満の場合に、健康保険の被扶養者及び国民年金の第3号とすることが可能です。ただし、そのためには奥様が健康保険や厚生年金の加入要件を満たしていないことが前提となります。
社会保険では、常勤役員の場合は報酬を得ている限り強制加入になります。非常勤役員の場合は報酬額に関係なく、労働時間が一般従業員の概ね3/4以上の場合は強制加入となります。ただし、判断は保険者が実態に即して行いますので、労働時間が短い場合でも、保険者の判断により強制加入と判断されることがあります。
人事・労務について
役員を務める奥様が報酬を下げて扶養になることはできるか?
2013 年 2 月 23 日 土曜日厚生年金のシミュレーションをして気付いたこと
2012 年 10 月 12 日 金曜日 年金問題の一つとして言われているのが、掛けた額以上の年金が返ってくるのかという疑問です。
年金は国民年金・厚生年金も終身保険ですので、長生きするほど多くが返ることになるのは間違いのない事実です。
では掛けた金額が戻るのかの計算ですが、これが厄介です。なぜなら、毎年保険料が上がっているため、と厚生年金には基礎年金が含まれるからです。そこで、標準報酬額(ほぼ給与額)が10,000円多い場合で考えてみました。標準報酬額が10,000円違うと自己負担の保険料は約840円/月変わります。で年金は約55円/月増えるのですが、これだと15年以上年金をもらって何とかという数字です(物価、金利を計算しない)。ただし、会社負担分が同額だけありますので、実質30年以上もらわないとという評論家もいます。
ここまでは一般的によく言われていることなのですが、実際の社会保険料は年金だけでなく、健康保険とセットになっている場合がほとんどです。今回シミュレーションして気付いたのが、10,000円標準報酬額が上がると健康保険料・介護保険料も含め約1420円/月変わる計算になり、この分も含めると25年以上年金をもらって何とかという数字になることです。健康保険料は所得の多い方に多くの負担をしてもらう制度ですのでこの計算は邪道かもしれませんが、シミュレーションではこうなったのも事実です。
厚生年金は正式名称を厚生年金保険という名のとおり、あくまでも保険なのかもしれません。
有期労働者の無期限雇用への転換を考える
2012 年 8 月 23 日 木曜日 8月3日の参議院で、有期契約労働者についての雇用安定や待遇改善を図ることを目的とした労働契約法改正案が賛成多数により可決、成立しました。この改正案では、同じ職場で5年を超えて働いた場合、本人の希望に応じて無期限の雇用に転換できるとしたのが大きなポイントです。従来、半年から1年程度の契約期間で、契約更新を繰り返して長期間、同じ会社で働く人が多く、これが雇用安定にとって問題になっているとの判断のようです。
ではこの改正が労働者にとって有利になるのか?というとそうではないように思えます。中には能力がありながら、正社員になりたいのになれなかった人にとっては有利に働くことが考えられますが、そうでない場合は無期限の雇用を希望せずに続けて働きたい労働者でも、会社の立場として5年を目の前にして契約を更新しないといったケースが増えることが予想されます。
日本の社会を考えると、円高の影響、デフレの影響などで企業にとっては人件費を下げなければ経営自体が難しくなっています。低賃金の労働力が確保できないとなると、その他の人件費を削らざるを得なくなるのではないでしょうか?
いずれにしても有期雇用や最低賃金の問題は、所得税の103万円問題、社会保険の扶養問題なども合わせて考えない限り本当の意味での改正にはならないように思うのですがいかがでしょうか?