連日メディアで話題となっている某大手企業の『不適切会計』ですが、その表現について会計に携わっている者としてはかなりの違和感があります。
元々は不適切な会計処理が行われていたが詳細が分からない という状態なので、とりあえず『不適切会計』という文言が使用されていたようですが、徐々に解明されてきた現状では経営陣は否定しているものの(とりあえず否定するでしょう)組織ぐるみで行われていた可能性が極めて高いことから、もはや『粉飾』と言ってもいいのではないでしょうか。
各メディアではいまだ『不適切会計』『不正会計』『利益水増し会計』なるフレーズが使用されていますが、どの時点で公に『粉飾』というフレーズになるのでしょうか。(このまま使用されない可能性もあります)
さて、フレーズはさておき、会計人としてはその手法を理解しておく必要があります。(不正に加担するためではありません)
今回何点かの不正方法がありますが、大きな要因の一つとして『工事進行基準での原価過少見積り』が挙げられています。
工事進行基準とは、完成引渡基準を大原則とする法人税法において、長期間に渡る工事については進捗率に応じてその事業年度の収益として計上する会計基準をいいます。
進捗率は原価比例法によって計算することになっており、当初の見積総原価に対する当期の実際発生原価の割合によって進捗率を計算します。
今回の内容は、この見積総原価を過少計上してました ということでした。
見積総原価を下げる⇒進捗率が上がる⇒当期の売上が実際よりも多めに計上されるという流れになります。
もう一つの大きな要因としては、製品の加工のための外部加工会社への引渡しの際売上として認識し、その時点で利幅を取っているということが挙げられています。
外部加工会社から製品が戻ってくる時は仕入として認識するようです。
この方法でいくと、とにかく製品を作って外部に回してしまえば売上が上がることになります。外部加工会社としては仕入がいくら増えても完成して出荷しなければ在庫となりますのでいくら受け入れても損益に影響がなく赤字になりません。(在庫維持管理コストはかかりそうですが)
大きな要因であると言われる上記2点を挙げさせていただきましたが、どちらもあくまで売上の先取りであり、実際の完成引渡しの時点にしわ寄せがいきます。そのしわ寄せを埋めるためにはさらに売上の先取りをして・・・というように、不正会計というのは一旦してしまうとなかなか抜け出せません。過去の不正の埋め合わせをした上で当期も適正に利益を上げるということは従来の2倍の努力をしなければいけなくなります。
何より不正会計の弊害は、数値を操作することによって本来の業績の測定が困難になるということです。
正しい数値を基に根本的な課題の解決に取り組むこと、原理原則に従うということが重要であるということを再認識できた出来事でした。
担当:山﨑