AIJ投資顧問の年金資産消失問題で、厚生年金基金の抱えている問題が表面化してきています。
そもそも厚生年金基金は厚生年金に+αして年金の額を増やし、社員の老後を楽にするという福利厚生の目的で作られた制度です。しかし、少子高齢化で受給者が増え、低金利で年金基金の運用が上手くいかないといった問題もあり、+αの上乗せ分だけではなく、国に代わって運用している代行部分に必要な積立金まで確保できていない状況になってきているのです。特に「総合型」と呼ばれる、同業種の会社の集まりなどで設立・運営している基金は、中小の企業も参加していて、問題を多く抱えているようです。
こんな話を聞くと、「自分のところは大丈夫なのだろうか」と心配が立ち、「だったら今のうちにやめておこう」という思いになるのですが、このやめること(脱退)も実は簡単ではないのです。財政状況が悪化している厚生年金基金をやめる場合は、脱退特別掛金を支払わなければ抜けることができないという問題があるのです。これは、脱退する事業所にも本来負担すべき債務分を、脱退の時に一括で負担してもらおうというもので、理論的にはおかしくはないようなのですが、どこか釈然としないものです。
4月16日付で民主党の作業部会で、この問題の検討に入ったというニュースが流れてきました。この問題だけではなく、表面化していなかったいろいろな問題がここに来て顕在化してきていますが、将来に先送りするのではなく関係している世代が責任をもって解決すべきだと考えます。
厚生年金基金の問題
2012 年 4 月 24 日維新八策を考える①
2012 年 3 月 14 日 橋下大阪市長のもと考えられた維新八策が話題になっていますが、その中の資産課税が「富裕層が海外に流出し、日本に中低所得者層しか残らなくなる」との反対論が内部からあがり、頓挫しようとしています。
この資産課税は、大前研一氏が推薦する策で、個人資産に課税することで貯蓄などを消費に回すよう促して経済を活性化させるという狙いがあります。大前氏の理論では、国民レベルで1500兆円の金融資産及び2000兆円の不動産関連の資産に1%課税すると35兆円の税収が入るという計算であり、それによって相続税もいらなくなるという発想です。
また大前氏は、この資産課税と消費税(GDP500兆の5%で25兆円)を中心にすることで、法人税も要らないといっています。それに伴い、税務会計が簡素化され、税務署の職員も大幅に減るだろうともいっているが、はたしてそうなのでしょうか。
そもそも富裕層が海外に出ていくといった問題の前に、中低所得者層も銀行にお金を預けなくならないだろう。理由は預けていたら資産があるのがバレるので、1%つかない現在の金利ではだれも銀行には預けなくなる。その結果、富裕層でなくてもお金を隠すといった行為が巷で行われることになり、税務署職員の仕事が調査中心のより非効率なものになる心配はないだろうか?
週20時間のパートも社会保険加入?
2012 年 3 月 7 日 社会保険加入要件の問題で、現在30時間(正確には常勤者のおおむね4分の3)以上働く人が対象になっているのを、20時間まで下げて加入する人を増やそうという改正案の審議が大詰めをむかえています。
この改正案いくつかの問題があり、その一つがそもそもパートで働いている人が社会保険に加入したいのかということです。あるアンケート調査では約4分の3のパートタイマーが社会保険への加入を望んでいないという結果になったそうで、あえて短時間で働く理由に「扶養の範囲で家庭の足しになるように」があるようです。
こういった問題を解決するためには年金等の抜本的な見直しをしないわけにはいかないと考えます。社会保険には扶養の仕組みがあり、被扶養者は健康保険料は払わなくてもよく、被扶養配偶者は国民年金第3号になり自分で年金を払わずに年金がもらえます。これが、短時間で働く大きな理由の一つになっているのです。一方で自営業者等が加入する国民健康保険の場合は、子供であっても人数割りの対象にされ、その分の保険料(税)を払いますし、年金は働いていない配偶者であっても第1号として国民年金を払うという制度になっています。2つを比較すると「ちょっおかしいんちゃうか」と思わざるをえません。
以前から言われている制度の一本化を行わない限り改善されることはないでしょうが、今の国会をみているとそういった抜本改革を協力しておこなおうという姿勢がないのは残念です。